不可抗力の集中
以前から、知人から厚意で譲って頂いた短編を読み進めている。江國香織の「泳ぐのに、安全でも適切でもありません」
正直、読めるかどうか心配であった。
本が好きである自信はそこそこあるのだが、久しぶりの活字であり、ジャンルも地に足のついた、女性の人生であったのだ。
あまつさえ、一流の作家が筆を執った作品である。
普段ならまず間違いなく手に取る本ではないことに、しりごみしていた。
しかし、そんな不安は1話目を読み始めてすぐになくなった。
たまらなく面白い。何を怖がっていたのだろう。そうやって少し前の自分を恥じた。
(本の内容自体はまだ読み終えていないので省略する)
日々の余暇で読み進めているうちに、ふと気になることがでてきた。
普段は彼氏の横---TVの賑やかな音に囲まれて読書をしていたのだが、この環境を変えると変化は出るのだろうか?
早速彼氏に話をしてTVを消して読書に入った。
冒頭を読んだ時点で確かな手応えを感じる。
1ページを読むころには、1人の女性の人生を覗き込んでいた。
正直、ある程度の差はあるだろうなとは前もっていたがここまでとは驚いた。
TVの音や、声が飛び交っている時に見る世界はどことなく朧気で、ひどく眠りが浅い時に見る夢のようであった。
しかしどうだろう、音を無くした先に見る世界はとても鮮明で、躍動している。
感心する間もなく世界に引き込まれ、気づけば1話を終え、爽快であった。
もちろん、TVがなっているからと言って、それを見ようとも聞こうともしている訳ではない。
それなのに邪魔をされていたというのがたまらなく面白かった。
意識していてもどうしようもないこともある、そんな発見を読書の中に垣間見た。
残り約3割、ここからはTVのない部屋で読み進めていこうと思う。
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当たり前といえば当たり前のことではありますが、こうも差を実感出来たのが面白くて記事にしてみました。
何かをするにあたっての環境の大事さを改めて噛み締めた時間でした。